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無痛の乳がん検査で早期発見を

無痛の乳がん検査で早期発見を
予防・健康
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早期段階で発見難しい乳がん

国内では2人に1人が「がん」を発症し、女性のがんでは乳がんが最多。年間9万4000人以上が乳がんになり、1万5000人以上が亡くなると推計されます。

このうち、早期発見・早期治療でほとんどの人は完治します。ステージ0期やステージ1期で発見されると、多くの場合は再発もなく乳がんの克服が可能です。

とはいえ、乳がんは早期段階では自覚症状が乏しく、乳房のしこりに気づいたときには「進行がんだった」という話も珍しくはありません。他の臓器へ転移したステージ4の進行がんでは、5年生存率が40%を下回り、根治が難しくなります。

しこりに気づいてから受診まで時間がかかると…

「しこりに気づいてすぐに検査を受ければ、克服が可能なケースは少なくありません。しかし、乳がん検査のマンモグラフィ(乳房X線検査)を受けたくないなど、しこりに気づいてから受診までに時間がかかり、がんが進行してしまうこともあるのです」

こう指摘するのは、東海大学工学部医用生体工学科の高原太郎教授。ドゥイブス法というMRI(磁気共鳴画像撮影)の検査方法を開発し、無痛のMRI乳がん検査「ドゥイブス・サーチ」という新しい検診の普及に尽力しています。

マンモグラフィ「受けたくない」

「乳がんの早期発見には自治体などの乳がん検診が役立ちますが、受けていない人が半数以上です。マンモグラフィ検査は乳房を強くはさんで行うため、人によっては痛みなどが伴ううえ、必ずしも乳がんの早期発見につながらない場合もあるため、受けたくないと考える人もいるのでしょう」

厚労省は対策型検診と呼ばれるがんの無料検診を実施しています。そのうち乳がん健診は、40歳以上を対象に2年に1回、問診とマンモグラフィを受けることが勧められています。マンモグラフィは、乳房を板のような医療機器にはさみ、乳房内をX腺で映し出します。乳房を伸展して挟み込む必要があるため、乳房サイズが小さい人や、炎症のある人は強い痛みを伴う場合があります。

高濃度乳房のがんはマンモグラフィでは見つけにくい

しかも、乳腺組織が発達して密度の濃い「高濃度乳房」は、マンモグラフィでは白く見える部分が多くなり、早期の乳がんを見つけにくい課題もあります。痛い思いをしたのに乳がんが見つからないのでは、敬遠されるのもわかります。

「女性が40代で発症するがんは乳がんが最も多く、亡くなる人の割合も40代で高くなっています。40代の女性は高濃度乳房なので従来法では見つけにくい。いかに早期発見・早期治療につなげるか。それが乳がん克服のために重要です」

ドゥイブス・サーチはMRIで気軽に早期発見

MRI乳がん検査の「ドゥイブス・サーチ」とマンモグラフィとでは仕組みが異なります。着衣のままうつぶせになって15分で終わる検査で、無痛の乳がん検査として注目を集めています。

「気軽に検査できることが早期発見・早期治療につながります。ドゥイブス・サーチという無痛の乳がん検査があることを多くの人に知っていただきたいですね」

解説
東海大工学部教授、ドゥイブス・サーチ代表
高原 太郎
東海大学工学部医工学科教授。聖マリアンナ医科大学放射線科勤務。医学博士。ドゥイブス・サーチ代表。1961年、東京都生まれ。秋田大学医学部卒。オランダ・ユトレヒト大学病院放射線科客員准教授などを経て、2010年から現職。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。