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【ベストセラー健康本】『命を守る「すい臓がん」の新常識』

【ベストセラー健康本】『命を守る「すい臓がん」の新常識』
予防・健康
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早期発見困難、「最も怖いがん」

沈黙の臓器といわれる膵臓(膵臓)のがんは、早期発見が難しく、5年生存率が8.5%であることから、「最も怖いがん」と呼ばれる。その早期発見「尾道方式」を生み出し、成果をあげている医学博士でJA尾道総合病院(広島県尾道市)副院長の花田敬士医師=写真=による著書『命を守る「すい臓がん」の新常識』(日経BP刊、1650円)が話題だ。

今年1月期のドラマ『春になったら』(フジテレビ系)は、木梨憲武がステージ4のすい臓がん患者として余命生活を生き抜く姿を描き、多くの視聴者の胸を打った。近年では石原慎太郎さんや八千草薫さん、さいとうたかをさんらが、すい臓がんでこの世を去った。

5年生存率を約20%にまで高めた「尾道方式」

そんな厳しい現実に立ち向かうべく、地元・尾道ですい臓がん早期発見のための病診連携(病院と診療所の連携)を進める花田医師。すい臓がんの5年生存率を約20%にまで高めた「尾道方式」の秘密を解く本書は以下の章立てで構成される。

  • なぜすい臓がんは「怖いがん」なのか
  • すい臓がんの確実な早期発見法
  • どういう人がすい臓がんになりやすいか
  • 治療について
  • がん以外のすい臓の病気

どういう人が、すい臓がんになりやすいか

このうち、現在健康な生活を送る人の多くが気になるのが、「どういう人がなりやすいか」という点だろう。特に注意すべき「危険因子」(リスク)として、次の4つを挙げている。

  1. がんの家族歴・既往症…血縁のある近親者にすい臓がん患者、または大腸がん、乳がん、卵巣がんの患者がいる。本人に大腸がん、乳がん、卵巣がんの既往歴がある。
  2. すい管・すいのう胞…画像検査で「すい管の変化」や「すいのう胞」が発見されている。
  3. すい臓の病気…慢性すい炎、または40歳以上で急性すい炎を経験。
  4. 糖尿病…50歳以降、急に糖尿病を発症、または治療中の糖尿病が急激に悪化した。

すい臓がんを知ることで、自らを守る

各項目の詳細が本書にまとめられている。

孫子の兵法の中に、「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という有名な一節があるが、本書を精読し、早期発見や適切な治療のために自分自身ができることを知ることで、万が一のときによりよく対処できるのではないだろうか。

花田医師が語る。

「私の住む尾道地区ではすい臓がんのリスクがある方に地域の診療所で検査を受けていただく『尾道方式』を導入し、現在、(5年生存率が)約20%に改善しています。すい臓がんで悲しむ方を1人でも減らすために、この本を通じて、すい臓がんのリスクを正しく理解し、早期発見に必要なことを知っていただきたいと思います」

すい臓がんを知ることで、自らを守る力が得られる、そんな1冊だ。

注意したいがん以外のすい臓の病気

すい臓がんリスクにも関係する、注意すべきがん以外のすい蔵の病気には、以下のものがある

  • 急性すい炎…すい液によってすい臓が溶ける急性の病気で、炎症が広がると命に関わることも
  • 慢性すい炎…慢性の炎症によりすい臓が徐々に硬くなり、機能が失われていく。急性すい炎を繰り返すことで慢性化することも多い
  • すいのう胞…内部に水分や粘液成分を含んだ「袋状の病変」。多くは無症状だが、見えないほど小さながんがのう胞の後ろに隠れていることもあるので注意が必要

(本書より抜粋)

執筆者
ジャーナリスト
田幸 和歌子
医療ジャーナリスト。1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。「週刊アサヒ芸能」で健康・医療関連のコラム「診察室のツボ」を連載中。『文藝春秋スーパードクターに教わる最新治療2023』での取材・執筆や、健康雑誌、女性誌などで女性の身体にまつわる記事を多数執筆。