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大腸がん治療最前線(4)~精度が高まる化学療法と副作用コントロール

大腸がん治療最前線(4)~精度が高まる化学療法と副作用コントロール
病気・治療
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分子標的薬にも副作用がある

大腸がんに限らず、がん治療では化学療法に抵抗感を示す人は少なくない。これまで、吐き気や嘔吐(おうと)などの強い副作用の苦しみ、抜け毛などの外見上の変化などがよく知られているためだ。現状はどうなのか。

大腸がんに対する化学療法における副作用対策について、聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学講座准教授の伊澤直樹医師に詳しく聞いた。

現在がん治療に用いられる薬には、多かれ少なかれ何らかの副作用が必ずある。そのうえで、がんを抑制する本来の薬理作用と、患者が受けるダメージ(副作用)のバランスを見ながら治療を進めていくのが化学療法の考え方だ。

これまでに使われてきた殺細胞性抗がん剤はもちろん、近年開発が進む分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬も同様で、「副作用がない薬はない」ということは、知識として持っておく必要がある。

薬の種類と量が増えると副作用は強くなる

「殺細胞性の抗がん剤には、副作用のパターンがあります。食欲不振や倦怠感、下痢、吐き気などが代表的で、投与から1週間程度が過ぎると白血球の減少や血小板の減少が顕著になります。そして、薬の種類と量が増えれば、それだけ副作用も多く強くなる、という相関関係があります」

他にも大腸がんに対して使われる薬として血管新生阻害薬(抗VEGF阻害薬)があるが、これには血圧上昇、出血、消化管穿孔など、また抗EGFR抗体薬には皮膚のざ瘡様皮疹、低マグネシウム血症、アレルギー症状などが出るリスクがあるという。

副作用をどうコントロールしているか

では、腫瘍内科医はどのようにして副作用をコントロールしているのだろう。

「化学療法開始時に薬剤師から詳細な説明を行い、患者さん自身に『症状日誌』を書いてもらうことも副作用のコントロールをしていくうえで役立ちます。化学療法の基本はフルドーズ(既定の投与量の総量)から始めて、副作用に応じて副作用止めの使用、化学療法の減量などで調整していきます。このあたりの“さじ加減”が腫瘍内科医の技量といえるでしょう」

中には副作用がつらすぎて治療の続行が不可能なケースもあれば、「まったく、つらくない」という人もいて、そのあたりの個人差はきわめて大きい。ただ、自覚できる副作用は無くても、血液検査をすると数値で見えてくる副作用もある。

効果と副作用の度合いは無関係

「白血球の減少などは自覚症状はありませんが、免疫力が低下しているので感染症にかかりやすくなっています。この状況で感染症にかかると治りにくいので、発熱時の正しい対処法などをしっかり指導しておく必要があるのです」

ちなみに、「副作用が少ない時は化学療法としての効果も小さい」という説を耳にすることがあるが、本当のところはどうなのか。

「稀に副作用と効果がリンクしている薬剤もあるのですが、多くの場合、効果と副作用は無関係です」

少なくとも20年前と比べて化学療法の副作用コントロールは精度が高まっている。必要以上に怖がる必要はない。

解説
聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学講座准教授
伊澤 直樹
大腸がんは日本では年間約15万8000人の新規患者がおり、5万4000人が亡くなる深刻な疾患。近年では若年層でも発症が増えている。自覚症状が出るのは進行した段階だが、健診での便潜血検査が重要だ。早期発見で内視鏡切除や低侵襲手術が可能。
執筆者
医療ジャーナリスト
長田 昭二
医療ジャーナリスト。日本医学ジャーナリスト協会会員。1965年、東京都生まれ。日本大学農獣医学部卒業。医療経営専門誌副編集長を経て、2000年からフリー。現在、「夕刊フジ」「文藝春秋」「週刊文春」「文春オンライン」などで医療記事を中心に執筆。著書に『あきらめない男 重度障害を負った医師・原田雷太郎』(文藝春秋刊)他。