花粉症に代表されるアレルギー疾患の名医を紹介する。国際医療福祉大学教授で、同大成田病院耳鼻咽喉科部長の岡野光博医師だ。
免疫学に興味を持って耳鼻科に進んだ岡野医師。現在は花粉症に代表されるアレルギー性鼻炎から、難病指定されている好酸球性副鼻腔炎の手術のような先進的な治療まで、あらゆる鼻の症状に対応する。
新型コロナウイルス感染症の後遺症で嗅覚障害を訴える人が増えている。
「オミクロン株が主流になってからは、鼻やのどの症状が中心になったこともあり、忙しさにも拍車がかかりました」と語る。嗅覚リハビリや嗅覚刺激療法など、専門性の高い治療で〝匂い〟を取り戻す。
花粉症に対しても、一般的な薬物療法はもちろん、根本治療を求める患者には得意とする免疫治療で対応する。
「舌の下に微量の抗原を投与して体を慣らしていく舌下免疫療法も行っています。半年程度で効果が出始め、3~5年の治療で、ほぼ発症を抑えることも可能です」
重症のアレルギー症状に苦しむ患者には、鼻水を出す神経を切断する手術療法など、大学病院ならではの専門性の高い治療法に特色をもつ。
そんな岡野医師がこれから取り組もうとしているのが、「花粉症の重症化ゼロ作戦」。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のワーキンググループが行う、2030年までに花粉症の重症化をゼロにするキャンペーンの委員長に就任したのだ。
「花粉症による生活の質(QOL)の低下はばかにできません。これを無くすために、臨床と研究の両面から取り組みます」
花粉症患者の多さでは世界でもトップクラスの日本。岡野医師の挑戦に、世界の耳鼻科医が熱い視線を送っている。
岡野光博(おかの・みつひろ)
1965年、岡山県生まれ。89年香川医科大学(現・香川大学医学部)卒業。93年岡山大学大学院を修了し、同大医学部耳鼻咽喉科入局。米ハーバード大学留学を経て、岡山大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学講師、准教授。2017年から国際医療福祉大学教授、同大成田病院耳鼻咽喉科部長。日本耳鼻咽喉科学会専門医・専門研修指導医・会報編集委員会委員。日本アレルギー学会代議員・指導医。日本鼻科学会理事・国際委員会委員長他。医学博士。趣味は「こだわりのコーヒーを淹れること」。